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ロースクールは本当にオワコンなのか?真実を探る

予備試験・司法試験を知る

新司法試験が始まって以来、ロースクールはずっと議論の的となってきました。ロー不要論とか「オワコン」とか、色々と言われてきました。テレビやネットの情報、さらには周囲の声に流されがちなこの時代、ロースクールに対する一般的なイメージは必ずしもポジティブとは言えません。

しかし、真実は一体どうなのでしょうか?ロースクールは本当にその価値を失ってしまったのでしょうか、それともまだまだその存在意義や魅力を持っているのでしょうか。

この記事では、風評や先入観にとらわれず、ロースクールの現状とその価値を客観的に評価していきたいと思います。ロースクールを検討している方、または法律業界に興味を持つ方に、少しでも参考になる情報を提供できれば幸いです。

ロースクールについて

ロースクールは、法律専門職の養成を目的とした大学院のプロフェッショナルコースとして設置されています。具体的には、弁護士、検察官、裁判官などの法律専門職を目指す学生を対象として、実務に即した専門的な教育を行っています。

このロースクール制度は、2004年に日本に導入されました。それ以前は、大学在学中もしくは卒業した後に司法試験を受験するという流れが一般的でした。しかし、実務に即した教育の必要性や、法律専門職の質の向上を目指すため、アメリカなどの制度を参考にしてロースクールが導入されました。

以降、ロースクールを卒業するか、受かればロー卒業と同等と認められる予備試験に合格するか、いずれかの条件を満たさないと司法試験を受験することができなくなりました。

導入当初は、多くの大学がロースクールを開設し、多くの学生が入学を希望しました。しかし、時が経つにつれて、司法試験の合格率や就職状況などの問題が浮上し、ロースクール制度自体の在り方が問われるようになりました。ロースクールは導入時から現在にかけて、多くの変遷を経てきました。

ロースクールが「オワコン」と言われる理由

「ロースクールはオワコン」残念ながら、よく聞きます。

新司法試験制度に移行した直後は、旧司法試験合格者が自分たちの優位性をアピールするために「新司は旧司より簡単だ」とか「ロー卒新司試験合格者はレベルが低い」とか言っているのを色んなところで見かけました。ムキーっとなって言っていたのでしょう。これは無視してよいかと思います。

しかし、その時代が過ぎ去り、今改めてちゃんと「オワコン」になっていると評価されるようになりました。

司法試験合格率の低さ

ロースクール制度の導入当初、多くの学生が高い合格率を期待して入学しました。しかし、年々、ロースクール卒業生の司法試験合格率は低下の一途をたどっています。特に一部のロースクールでは、合格率が非常に低いことが指摘されており、学生たちの間での不安や疑念を招いています。そして、合格者がほぼ出ない下位のロースクールが多数淘汰されていきました。

司法試験合格率は、予備試験経由の受験者が圧倒しており、その他ローは東大や京大でも60~70%に留まっています。

▼令和4年度司法試験データ

属性受験者最終合格者合格率
受験者全体3082140345.52%
法科大学院合計2677100837.65%
予備試験合格者合計40539597.53%
作成元データ:法務省「令和4年司法試験の結果について」

ロースクール卒業者の合格率が「37.65%」で、ローを卒業していない予備試験合格者の合格率が「97.53%」です。これはもう言い訳出来ないレベルで数値に顕著な差があります。実際、予備試験合格者の内実は上位ロースクールの在学生も相当な割合を占めているとはいえ、卒業していない学生たちでこれだけの合格率。そして、予備試験に合格していないロースクール卒の受験生たちの合格率はそれよりも圧倒的に低くなっています。

ロースクールごとの合格率上位5位はこのようになっています。

合格率順位ロースクール受験者合格者合格率
1位京都大学法科大学院17511968.0%
2位東京大学法科大学院19211760.9%
3位一橋大学法科大学院1106660.0%
4位慶應義塾大学法科大学院18110457.5%
5位東北大学法科大学院482756.3%
作成元データ:法務省「令和4年司法試験法科大学院等別合格者数」

いずれも有名な学校名ですが、上位校でこの状態なので、下位のロースクールではもっと大変なことになっているのが現状です。最終合格者が1名とか、最悪0名のロースクールも多数存在します。

もちろん本人の努力や努力の方法に原因はあるものの、さすがに1人も受からないローがそこそこの数あるとなってくると、これは制度設計的におかしいと言わざるを得ないという意見が出てくることも否めません。「ローに行っても司法試験に受からない」となれば、ロースクールはオワコンと言われてしまっても仕方ないのかもしれません。

卒業生の就職状況

ロースクール卒業後の就職先として想定されているのは、弁護士事務所や裁判所、検察庁などの法律関連の職場です。司法試験に合格し、弁護士・検察官・裁判官になろうと思って、当初入学してきたはずです。

しかし、最終的に司法試験に合格しなければこれらの職には就けません。5振して合格できなかったり、途中であきらめたロー生たちは、他の職種を目指すこととなります。企業の法務部や法律事務所の事務員として就職したり、国家公務員試験を受けて官僚になったり、司法書士・行政書士を受験する人もいます。

ロー卒でこういった職種で大活躍している方は多々いらっしゃって、しかも合格しなかったとはいえ、もともと粘り強く司法試験の勉強に立ち向かえる優秀な人材です。最近では、ロー卒不合格者だとしても、ポテンシャルがあって企業人としては優秀な人材であるということが企業側にも分かってきて、普通に就職できることも多いです。

人生いろいろですから、回り道をしたことで出会えた会社やチャレンジしたことで自分の適性を知り、納得して勤めることができるようになった等、ストーリーが人の数だけあることは重々承知しています。

水を差してしまい心苦しさもありますが、こういった職業は大学を卒業すれば就くことができます。ローに行かなくても、なることが出来る職種です。となるとロースクールの存在意義とは何なのだろうと疑問に思う方が出てくるのも仕方のないことなのかもしれません。

高額な学費

ロースクールの学費は、一般的な大学院よりも高額であることが多いです。この高額な学費に見合ったリターンが得られないと感じる学生や保護者からの批判も少なくありません。

これまで述べてきたように、合格率もロー経由ではない方々の方が高く、卒業後に就活をするとなると大学卒業と同じような仕事に就くだけ。となれば、費やした学費に見合うものが得られない学校と思われてしまうのも納得せざるを得ないところがあります。

ロースクール入学金授業料(年)その他
東大ロー282,000円804,000円
京大ロー282,000円804,000円
慶應ロー100,000円1,120,000円在籍料 300,000円
施設設備費 190,000円
その他費用 12,240円
中央ロー300,000円1,000,000円施設設備費 300,000円
※2023年度の金額

有名どころのローの学費を調べてみましたが、すさまじい金額です。なんか国立ローの入学金って17~18万円くらいだった気がしたのですが、値上がりしたのでしょうか(気のせい?)

これだけ支払って受かるのならまだしも、学部生の新卒就活と同じような職種に就くのであれば、割に合わないと考える人が増えてしまうのは致し方ないのかもしれません。

ロースクールの価値

「オワコン」との声が上がる一方で、実はロースクールは “教育機関としては” 思った以上に魅力的な場所であり続けています。その背後には、ロースクールが持つ独自の価値やメリットが存在します。

専門的な法律教育
ロースクールは、専門的な法律教育を受けることができる場所です。一般的な大学の法学部とは異なり、実務に即したカリキュラムが組まれており、実際の法律の現場で役立つ知識や技術を学ぶことができます。

実務家教員の行う授業は結構人気で面白いものも多いです。先生と仲良くなれば飲みに行って話を聞いたり、事務所の見学に行ったりできます。自分から積極的に行くコミュ力がある前提の話にはなりますが、得ようと思えばいくらでも繋がりは得られます。

講義以外のプログラムや体験型授業
多くのロースクールでは、模擬裁判やインターンシップなどの実習プログラムが充実しています。これにより、学生は実際の法律の現場での経験を積むことができ、理論の学習だけでなく、さまざまな体験もしながら学ぶことができます。

模擬裁判やグループワークで超リアルな事案を用いてリアルな証拠を使って主張を考えたり、ゼミで司法試験にない科目だけど身近な法律を学習したり、裁判傍聴に行ったり、法律家に興味のある中学生や高校生に法律の授業をしに行ったり、刑務所の見学をしたり。

面白い学びの機会がたくさんあります。これを「司法試験に関係ない」と言ってしまえばそれまでですが(受からなければ意味がないので、そういう意見はごもっともであると思います)、ロースクールでしか得られない学びが多数あるのも事実です。

大人たちがローについて色んな意見を言っていますが、当の学生は「ローはローで楽しかった」という感想を持っている人も実は多いのです。ロースクールには確かに批判の声も多数存在しますが、それだけが全てではありません。

予備試験に受からなかった人が入る学校?

ロースクールに対する一般的な風評や批判的な意見も存在しますが、その背後には多くの価値やメリットもあります。ロースクールでの学びや経験は、法律家としてのキャリアを築く上での大きな資産となり得ます。

とはいえ、高額な学費と20代の貴重な数年間を吸い取られてしまうと感じている司法試験志望者が多いのも事実であり、ロースクールはオワコンで予備試験に受からなかった人が入る学校だ、という世間の印象を拭うことは、難しそうな気がします(まず学生も教員も含めて、ロー当事者たちがその辺の風評をもはや自虐的に受け入れており、諦観している面があります)が、もし入ったら入ったで結構得られるものはそれなりにありますということを記して、終わりにしたいと思います。