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社会人が弁護士になるまでにかかる費用総額【法科大学院ルートvs予備試験ルート】

予備試験・司法試験を知る

社会人が働きながら弁護士を目指す場合、費用はどのくらいかかるのか概算をまとめてみました。割と現実に即した形で記載してみましたので、検討中の方は参考になさってください。

社会人が弁護士になるまでのルートの説明

弁護士になるためのルートは2種類あります。それぞれかかる費用が異なりますので、最初にこちらを簡単に説明させていただきます。

弁護士になるには2種類のルートがある
①法科大学院ルート
②予備試験ルート

弁護士になるには司法試験に合格する必要があります。司法試験を受験するためには、①法科大学院へ行って指定の単位を取得すること②予備試験の合格すること、のいずれか1つの条件を満たす必要があります。

①法科大学院ルートについて

法科大学院は2~3年通い、指定単位を取得すれば在学中から司法試験の受験が認められます。

在学中に合格したとしても、卒業しなければ司法修習生の採用要件を満たさない為、どのみち最後まで卒業をする必要があります。

②予備試験ルートについて

一方、「予備試験」にさえ受かってしまえば、大学院に通わなくても司法試験の受験をすることができます。

経済的余裕や諸々の余裕が無い方へ向けて、法律家への道が閉ざされてしまわないように開放されているルートになります。

予備試験の合格率は例年3~4%程度で非常に難関ですが、働きながら弁護士を目指せる方法でありリスクが小さいことから、キャリアの断絶を避ける社会人は、予備試験ルートを選択して司法試験に挑戦するのが通常です。

社会人が法科大学院ルートで弁護士を目指す場合の費用概算【350~560万円】

金額に幅がある項目もあるので、最小の場合と最大の場合で分けて記載しています。

項目最小費用最大費用
予備校代(基礎講座)850,000850,000
予備校代(司法試験講座、答練など)300,000300,000
予備試験 受験費用0103,000
法科大学院 入試費用135,000235,000
法科大学院 学費2,000,0004,000,000
市販書籍代50,00050,000
司法試験 受験費用120,000120,000
合計3,455,0005,658,000
法科大学院ルートで弁護士を目指す場合の費用(※ストレート合格の場合)

法科大学院ルートで行くと、かなりの費用が掛かり、経済的に負担が大きいことが分かります。ざっとみて、360~620万円です。幅が大きいのは、大学院の学費による違いです(国立か私立か、既修か未修かによって大分変わるので幅が出ている)。

また、この他にも大学院生期間・修習期間の間の生活費を考えておかなければなりません。

以下、項目について詳細説明をします。

予備校代(基礎講座)85万円

予備校の基礎にあたる講座費用です。予備校の予備試験・司法試験の合格パッケージとして販売されている商品を指しています。

予備校によって異なりますが、おおむね85万円程度として計算しています(高い予備校で100万円くらい)。

予備校代(司法試験講座、答練など)30万円

別途、基礎講座とは別に司法試験の論文対策講座や答練などを追加で受講する場合があります。おおむね30万円程度の追加課金を想定しています。

予備試験 受験費用 0~10.3万円

予備試験 受験料17,500円
宿泊費12,000円×2日
試験当日の諸経費(交通費や食費等)10,000円
合計51,500円
予備試験受験費用の詳細

予備試験1回の受験で上記金額です。
これを2回は受験するとして、
51,500円*2=103,000円

予備試験受験料

予備試験の受験料は、17,500円です。

法科大学院ルートで弁護士を目指していても、ロー在学中に授業をこなしながら予備試験を受けるのが通常です。

もしくはロー入学の前年に、ロー入試を受けつつ予備試験も受けている人がほとんどです(※ロー学内の上位成績確保に全振りするために、予備試験をあえて受けない人もいます)

五大事務所に就職するには、「予備試験に合格していること」や「上位ロー出身で、学内成績が1ブロック(成績優秀者)であること」「学部東大であること」「司法試験上位(1桁順位)合格」あたりの条件を満たすと優位になると考えられています(※もちろん採用基準が公表されている訳ではないが、実際に就職成功者はそういう人たちばかり。観測範囲内調べ)。

ロー在学中に予備試験に合格しつつ、学内でも成績優秀者を得る…という両取りはさすがに秀才でも厳しいので、大手事務所を狙う学生は、どちらかに振っていることが多いです。学内成績に振っている人は、予備試験を受けなかったりします。

が、その超ハイレベル層以外のロー生は、たいてい普通に授業をこなしつつ、予備試験の受験をするのが一般的です。

予備試験宿泊費

予備試験は、短答式・論文式・口述式の試験がありますが、論文と口述はそれぞれ2日間あります。試験は非常に疲れる為、1日目と2日目の間は近くのホテルに宿泊することも多いです。

論文と口述で1泊ずつホテル利用するとして、12000円×2日分の宿泊費を追加しています。

予備試験当日の諸経費

さらに、交通費や当日のご飯や栄養補給としてドリンクを買ったりお菓子を買ったりすると思いますので、試験当日の諸経費として10000円は見ておきました。

司法試験に最終合格するためにも、予備試験の勉強をしていることは役立ちます。だいたい通算で2回程度は受験することになるかと思いますので、2倍にして103,000円としました。

(17,500+12,000*2+10,000)*2=103,000円

法科大学院 入試費用 23.5万円

TOEIC 受験費用(2回受験想定)20,000円
私立ロー1校目 受験料35,000円
私立ロー2校目 受験料35,000円
私立ロー入学手付金(慶應など)100,000円
国立ロー30,000円
試験当日の諸経費(交通費や食費など)15,000円
合計235,000円
法科大学院入試関連費用の詳細

TOEIC受験費用

法科大学院の出願書類にTOEICのスコアを添付するため、TOEICも受けておく必要があります。2~3回くらいは受けるかと思いますが、一応ここでは2回受験してくる想定です。受験料は1回7,800円で、当日交通費や食費を合わせて、2回受験するとなるとざっくり20,000円くらいです。

法科大学院受験料

法科大学院の受験料は、国立ローで30,000円、私立ローで35,000円程度です。夏頃に私立2校受験して、秋頃に国立を1校受験。合計3校受験する想定です。

都心にお住まいの方だったら、だいたいは「東大ロー」「慶應ロー」「早稲田ロー or 中央ロー」あたりを受験する流れになるかと思います。

私立ロー入学手付金

私立ローは国立ローよりも受験が早く、国立ローの合格発表があるまで入学申し込みを待ってくれますが、待ってもらう代わりに手付金みたく、入学金を先払いでいくらか支払う必要があるローもあります(慶應ローがたしかそうだった気がします。※要確認)。これを10万円、想定しています。

中大ローに学費免除or一部免除で合格し、慶應ローにも通常合格して慶應を保留しつつ、最後に東大ローを受験。落ちれば慶應ロー、受かれば東大ローに進学。という流れが理想的です。

ロー入試当日の諸経費

ロー入試当日にかかる費用で、1校の受験あたり5,000円追加しています(交通費往復2,000円とご飯代や栄養補給やドリンクでいろいろ買って3,000円)。これが3校分なので、15,000円です。

上記に記載してきた受験想定で235,000円を最大費用、入学手付金がもったいないので払うのをやめたり、そもそもそれが無い学校を選んだ場合は135,000円で、これを最小費用として記載しています。

法科大学院学費 200~400万円

下記の表は、有名ローの学費です。表に記載している授業料は1年間分です。既修コースなら2年間なので×2、未修コースなら3年間なので×3になります。

ロースクール入学金授業料(1年間)その他
東大ロー282,000円804,000円
京大ロー282,000円804,000円
慶應ロー100,000円1,120,000円在籍料 300,000円
施設設備費 190,000円
その他費用 12,240円
中央ロー300,000円1,000,000円施設設備費 300,000円
※2023年度の金額

かなりざっくりですが、学費の見積もりは下記のイメージで良いかと思います。

大学院既修コース未修コース
国立ローの場合200万円300万円
私立ローの場合300万円400万円
国立私立×既修未修の学費マトリクス

市販書籍代 5万円

基本的に予備校で配布されたテキストを最後まで学習することになりますが、途中で多少市販の書籍を活用することがあるかと思います(過去問集の他にも、「憲法上の権利の作法」とか「憲法ガール」とか「刑法事例演習教材」とか…)。

予備校のテキストを全部やり切っても、足りない箇所が出てきた時、補うための問題集を購入する人もいます。あと短答の過去問題集は必要です。

諸々込みで一応、50,000円を追加しました。

司法試験受験費用 12万円

司法試験 受験料28,000円
宿泊費12,000円*6日
試験当日の諸経費(交通費や食費等)20,000円
合計120,000円
司法試験受験費用の詳細

司法試験受験料

司法試験の受験料は、28000円です。

司法試験宿泊費

司法試験は、全部で4日間あります。水曜・木曜の2日間行って、中1日お休みがあって、さらに土曜と日曜の2日間行います。

長丁場の試験になるので、試験中は近くのホテルを取って宿泊する人が予備試験よりも多いです。

前乗りで前泊する想定で、全6日間の宿泊として、12000円×6日分を算入しています。

司法試験当日の諸経費

交通費、食費、試験会場に持って行く栄養補給のドリンクやお菓子類の購入費として、全部でざっくり20,000円を算入しています。

登録費用関連

司法試験に合格して、修習をし、二回試験に合格したら、いよいよ弁護士になることができます。

日弁連・弁護士会の登録費用

弁護士として活動する為には、日弁連に登録したり、弁護士会に登録したりする必要がありますが、通常このあたりの登録費用は事務所が負担してくれることが多いので、今回の費用計算には参入しませんでした。

日弁連の登録は、月5000~10000円程度。弁護士会の登録費用は、登録する会によってバラバラに異なります。東京だとだいたい年60万円です(年会費とは別に、入会金が60,000~80,000円掛かります。)。高いところだと、年100万円とか取られます(たしか山口県)。

弁護士記章(バッジ)

ひまわりの憧れのバッジです。これを目標にして頑張ってきたはずなので、手に入れた時の喜びは相当なものでしょう。

バッジには純金製と純銀製があり、純金製を選ぶと6万円くらいかかりますが、純銀製であれば費用はかかりません。普通は、純銀製をもらいます。

純金製は金で出来ているので、削れても金ぴかのままです。純銀製は、金メッキ加工されているだけなので、削れたら銀色が出てきます。

純銀製バッジで、ワザと適当に乱雑に扱ったり筆箱の中に入れて傷だらけにしたりして、早く金メッキを剥がし、こなれた銀色にしたがります。使用感のある”いぶし銀”は、長年弁護士をやっているベテラン感が出て、カッコいいからです。

というわけで、こちらも費用はかからないということで、算入はしていません。

★法科大学院ルートの最小費用と最大費用

まとめますと、法科大学院ルートで最も費用が小さくなるのは、東大ローなどの国立ロー既修に合格して進学、学内の授業に集中して在学中には予備試験を受験せずに司法試験にチャレンジする場合です。

最大費用になるのは、私立ロー未修に進学し、在学中に予備試験を受けつつ、司法試験にチャレンジする場合です。

法科大学院に入る前にどれくらい実力がついているか否かで、その後に掛かってくる費用が変わり、司法試験の最終合格率も変わってくるイメージです。

だから、まずは一番高難易度の予備試験に受かるつもりで学習して、そこで実力を備えていき、予備に最終合格できなかったら法科大学院進学をする、という順番で進める受験戦略が一番良いのです(出来ればロー入学前に、予備試験最終合格は無理でも短答試験には合格している位の実績が欲しい)。

社会人が予備試験ルートで司法試験を目指す場合の費用概算【100万円程度】

項目最小費用
予備校代(基礎講座)850,000
予備校代(司法試験講座、答練など)0
予備試験 受験費用51,500
市販書籍代50,000
司法試験 受験費用120,000
合計1,071,500
予備試験ルートで弁護士を目指す場合の費用概算(※ストレート合格の場合)

予備校代(基礎講座)85万円

予備校の基礎にあたる講座費用です。予備校の予備試験・司法試験の合格パッケージとして販売されている商品を指しています。

予備校によって異なりますが、おおむね85万円程度として計算しています(高い予備校で100万円くらい)。法科大学院ルートとこちらは同様です。

予備校代(司法試験講座、答練など)無料

別途、基礎講座とは別に司法試験の論文対策講座や答練などを追加で受講する場合があり、講座代金はおおむね30万円ほどです。

が、予備試験合格者は基本的にどこの予備校でも優遇されており、司法試験対策関連の講座は無料で受けられることがほとんどです(予備試験合格者の司法試験最終合格率は非常に高いので、予備校の合格実績となってくれます。だから優遇されます。)

予備試験 受験費用 5.1万円

予備試験 受験料17,500円
宿泊費12,000円×2日
試験当日の諸経費(交通費や食費等)10,000円
合計51,500円
予備試験受験費用の詳細

予備試験受験料

予備試験の受験料は、17,500円です。

予備試験宿泊費

論文と口述で1泊ずつホテル利用するとして、12000円×2日分の宿泊費を追加しています。

予備試験当日の諸経費

交通費や当日のご飯や栄養補給としてドリンクを買ったりお菓子を買ったりすると思いますので、当日分の諸経費として10,000円を入れておきました。

市販書籍代 5万円

予備校のテキストを完璧にする方針で学習していたとしても、不足箇所が出てくることがあります。また、短答の過去問集は別途購入することになるかと思います。

諸々込みで、50,000円程度想定しておきます。

司法試験受験費用 12万円

司法試験 受験料28,000円
宿泊費12,000円*6日
試験当日の諸経費(交通費や食費等)20,000円
合計120,000円
司法試験受験費用の詳細

司法試験受験料

司法試験の受験料は、28000円です。

司法試験宿泊費

前述同様、前乗りで前泊する想定です。

全6日間の宿泊として、12000円×6日分を算入しています。

司法試験当日の諸経費

交通費、食費、試験会場に持って行く栄養補給のドリンクやお菓子類の購入費として、20,000円を算入しています。

登録費用関連

前述同様、日弁連・弁護士会の登録費用や、バッジ費用は算入していません。

予備試験ルートの方が圧倒的に費用が安い

法科大学院ルート予備試験ルート
弁護士になるまでの費用350~560万円100万円
弁護士になるまでの費用比較表(法科大学院 vs 予備試験)

まとめると、予備試験ルートの方が圧倒的に費用が安いです(学校へ行かなくて良いので、消費する期間も短いです)。

そして予備試験ルートの受験生は、司法試験の最終合格率が圧倒的に高いです。予備試験ルートの受験生の司法試験合格率は90%超えています。

社会人が司法試験を目指すにあたっても、基本的に予備試験ルート一択です。予備試験に本気でチャレンジしたけどどうしても合格できない、だけど諦められない…。そこまでいってしまった場合、法科大学院へ人生懸ける覚悟で入学されるのが良いかと思います。

コスパだとか、キャリアのことを考えて…位の気持ちだったら、ローは行かない方が良いです。

しかし、人生死ぬ間際に「あの時どうして諦めてしまったんだろう」と後悔するかもしれない人は、大きなリスク覚悟で、行ける所まで行って頑張ってみるのもアリだと考えます。長い目で見た時には、その不利で無謀な選択を取った方が、人生的には成功だったと言えるかもしれません。

後悔しない決断が出来ますように。