予備試験は、多くの受験生が挑戦するものの、その難易度は非常に高いです。社会人としての日常の中で、仕事や家庭の責任を背負いながらも、予備試験に合格を目指すことは容易なことではありません。
特に、短期間での合格は希少であり、大半は受かったとしてもトータル3~5年は受験勉強に費やしているのが現状です(3年合格でも非常に優秀)。しかし、中には1年という短い期間でこの難関を突破する強者もいます。その背後には、どのような学習法や努力があるのでしょうか。
合格者の背景を知りたい!インタビュー
Kさん(R3予備最終合格)
・年齢:28歳(法学部卒)
・職業:会社員(IT関連・データ分析職)
・家庭状況:既婚で1児の父。家族を支えるための収入を確保しつつ、学習時間を確保するのは一苦労だった。
受験のきっかけ
Kさん、まずは予備試験を受験しようと思ったきっかけや動機について教えていただけますか?
はい。私の仕事は技術の最先端に関わる分野です。最先端技術を使ったサービスやコンテンツの開発に関わる中で、この施策や提供予定サービスは法的なリスクを孕んでいないか等、まだ前例がない中で進めていかなくてはならず、とても苦戦しました。そういったプロジェクトに携わる中で、法律の重要性や専門知識に対する興味が再燃してきてしまいました。
自分の今後のキャリアのためにも、20代のうちにもう一度大きな挑戦がしたいという思いもありました。家族を持つ中での受験は確かに困難が伴いましたが、家族のサポートや自分の強い意志が動機となり、1年での合格を目指すことを決意しました。
ご興味が「再燃」ということは、この予備試験は初挑戦ではなく、リベンジというか再挑戦だったのですか?
はい、再挑戦です。実は、学生の頃に一度受けたことがあるんです。でも、その時はうまくいかなくて。社会人になって、家族もできて、業務を経験する中で改めて合格したいと強く思うようになりました。
一度経験していることもあって、予備試験が厳しい試験だということは体感で分かっていました。だから、ダラダラやっても時間を無駄にしてしまうだけだと思い、今回は1年という期限を設け、その限られた時間で全力で挑戦することを決めました。
1年での合格を目指す決意
Kさん、1年という短期間での合格を目指すという決意は、かなりの覚悟が必要だったのではないでしょうか?
私は仕事を持ちながらの受験となるため、むしろ何年も継続して学習し続けることの方が自分にとっては難しいと感じていました。短期で超集中する方が私には合っていました。
また、家族を持つ身として、彼らに長く待たせるわけにもいかないという思いがありました。短期間での合格を目指すことで、自分自身にプレッシャーをかけ、集中して学習に取り組むことができたと思います。
学習スケジュールと勉強方法
1年という短期間での合格を目指すには、厳しい学習スケジュールが必要だったと思います。具体的に、どのような学習計画を立てましたか?
そうですね、最初の2週間で全科目について一番簡単そうな初学者向けの薄めの本を1冊ずつ読んで全体像を把握しました。その後3ヶ月で基礎講座のインプットを回しつつ、短答式の過去問を即解き始めました。短答式の2ヶ月前頃から論文の練習を始め、そのまま夏まで突っ走りました。口述対策は論文の合格発表を受けてから開始しました。
怒涛の1年間ですね…!教材や参考書、予備校の選択はどのように行いましたか?
予備校についてはオンラインでの学習のしやすさと、実績がある点を重視して選びました。使用教材は基本的には予備校のテキストのみです。あれこれ手を出すと散らかってしまうので、予備校テキストを100%消化することを考えて、勉強しました。その上で論文対策で足りない部分は市販のテキストを科目ごとに1~2冊程度、補完的に使用しました。
効率的に学習を進めるためのテクニックや工夫した点はありますか?
はい、短時間でも集中して学習することを意識しました。例えば、移動時間や休憩時間を利用して暗記事項の復習を行ったり、一日の終わりに翌日の学習計画を立てることで、学習のモチベーションを保つように工夫していました。あと、その立てた予定は必ず消化するまで寝ない、と決めていました。
キツイように見えますが、そういった毎日が積み重なって自分に対する自信にもなるので、自分で決めたことをやり通すことは、受験生活全体を通して非常に重要なポイントだったように思います。
時間管理とモチベーション維持
社会人としての忙しい日常を持ちながら、学習を継続するのは簡単ではないと思います。どのように日常と学習を両立させていましたか?まずは家庭との両立についてお願いします。
家庭については、妻に協力してもらって、受験中は家事育児の大半をお願いしていました。とても感謝しています。
今後のキャリアとしてどういうプランでいるのか、そしてそうなれた場合にどれくらいの価値(年収面)があるのか、将来的に家計にとって大きなプラスになることを説明して、妻に納得してもらったことがよかったと思います。
特に揉めたりすることなく、受験生活を送らせてもらいました。
仕事との両立についてはいかがですか?
忙しい日も多かったです。毎日のルーチンに学習時間を必ず入れていました。歯磨きと同じように生活に必要なものとして、学習を溶け込ませていました。仕事で障害が発生した時はさすがにベッタリ対応せざるを得なくて時間が取れないこともありましたが、その分、業務が平穏なタイミングでは時間を作ってこっそり勉強してました。
会社の都合で、業務に関連する情報系の資格取得をお願いされた時がメンタル的には一番キツかったですね。なんて無駄な時間なんだと思いながら、会社に求められた別の試験の勉強をしていました笑
え、別の試験までこなしていたんですか…。長期間の学習を継続する中で、モチベーションを維持するのは難しいと思います。モチベーションが低下した時、どのように対処していましたか?
自分は大学受験で1浪していて、その時の経験から落ち込む時はだいたい睡眠不足かご飯を食べ忘れている時だと分かっていました。モチベーションが低下する日も確かにありましたが、いっぱい食べてとりあえず寝ると大半は回復します。
また、勉強に対する不安は、結局勉強することでしか解消できないことも知っていたので、淡々と学習を継続し、やるべきことをこなすだけでした。
達成したい目標を常に見える所に書いたり、合格後のイメージをしてやる気を出そうともしていましたが、結局は「食べて寝て勉強する」だけです。合格はそういう地味な日常から作られると思ってます。
試験前の最終調整
試験が迫る中、仕事との調整はどのように行いましたか?
実は、試験の直前は特に集中的に復習をしたかったので、事前に上司やチームに相談し、試験前の2日間は有給休暇を取得させてもらいました。これにより、最後の追い込み学習に集中することができました。幸い、同僚や上司からも理解とサポートを得られ、スムーズに試験に臨むことができました。
試験当日は、特に心がけたことや、具体的な対策はありましたか?
試験当日は、過度な緊張を避けるためにリラックスできるお気に入りの音楽を聴いたり、いつも勉強しながら飲んでいたコーヒーを持参しました。また、試験前夜は十分な睡眠をとるよう心がけ、当日はバランスの良い食事を摂ることで、最高のコンディションで試験に臨むことができました。試験中は、時間管理をしっかりと意識し、焦らず一問一問丁寧に解答することを心がけました。
合格後の振り返りと今後の展望
1年間の学習を終え、予備試験に合格した今、振り返ってみての感想や学びはありますか?
まず、1年間という短期間での合格は、本当に過酷でした。毎日の学習はもちろん、仕事とのバランスを取るのが難しかったです。しかし、予備試験受験を通じて、自分の持っている限界を再認識し、それを超えることの爽快さを覚えてしまいました。私の人生にとってかけがえのない経験になったと感じています。
予備試験に合格した今、今後のキャリアプランや目標について教えてください。
予備試験合格は私にとって大きな一歩でしたが、これがゴールではありません。司法試験まで最終合格しなければなりません。引き続き、気を抜かずに学習を継続しています。
キャリアプランとしては、最終的にはIT関連の法律に強く、開発実務も分かっている弁護士として専門的分野を持ちながら活躍したいと考えています。
今後予備試験に挑戦する社会人受験生へ
最後に、これから予備試験を受験する社会人へのメッセージやアドバイスをお願いします。
短期間での合格は確かに大変ですが、それだけに達成感も非常に大きいです。毎日の学習は欠かさず、計画的に進めることが大切です。
途中で挫折しそうになったとき、自分の目標や理由を思い出してください。それが大きなモチベーションとなります。自分のメンタルが乱れるパターンを記録しておき、上手く対処してどうにか学習を継続してください。
また、社会人として身につけてきた時間管理能力や、かつて学生時代に培った効率的な学習方法は、大きな武器となるはずです。
最後に、予備試験はただの通過点です。合格後のキャリアや人生を豊かにするためのステップと捉え、全力で挑戦してください。皆さんの成功を心から応援しています!
この度は合格おめでとうございました。ありがとうございました。
社会人としての経験や知識を背景に、予備試験に挑むことは、新しい視点やアプローチで学習を進めることができるという大きな利点があります。そして、社会人受験生としての挑戦は、ただの試験合格を目指すだけでなく、自身の成長やキャリアの拡大をもたらす可能性を秘めています。